Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

太田光

PROFILE

Hikari Ota 1965年生まれ、埼玉県出身。88年、日本大学芸術学部演劇学科の同級生・田中裕二さんと「爆笑問題」を結成。現在、レギュラーテレビ番組は『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』(日本テレビ系列)、『サンデージャポン』(TBS系列)、『スタ☆メン』『笑っていいとも!』(フジテレビ系列)、『爆笑問題の検索ちゃん』(テレビ朝日系列)、『空飛ぶ!爆チュー問題』(CSフジテレビ721)。『爆笑問題の日本原論』シリーズなど著書多数。最新刊に多摩美術大学教授・中沢新一氏との対談『憲法九条を世界遺産に』がある。スペイン出身の天才画家サルバドール・ダリの偉業を振り返る「ダリ回顧展」のスペシャルサポーターとして出演のCMが放送中。


インタビュー、文=白崎博史
写真=大倉琢夫


太田光インタビュー
花束くれる男なんか信用しちゃダメですよ!

家ではカミさんに
オレの存在そのものを
否定されています

 東京・上野の森美術館で始まる「ダリ回顧展」のスペシャルサポーターに起用された太田光さん。ダリといえば、その彼をして「私の絵画はすべてガラの血で描かれた」とまで言わしめた夫人のガラを抜きには語れないが、太田さんにとっても妻、光代さんの存在は大きく、彼女なくしていまの自分はなかったと言い切るほどの愛妻家だ。
「まず、かなわないなと思うのはコメディアンとしての才能ですね。いまはうちの事務所の社長なんかやってますけど、家で新しいネタを見せられたりすると、オレなんかよりぜんぜん面白いなと思う。あとは、口ですね。家に帰るとその日の出来事やなんかをとにかくずっとしゃべってる。あんまり夢中になってしゃべってるんで、そーっとベッド脱け出して別の部屋で1時間くらいタバコ吸ったりして、そろそろ寝たかなと思って戻ってみるとまだしゃべってる、みたいな(笑)」
 光代さんを伴侶に選んだ理由は、その才能に惚れたというより「話をしていて楽しかったから」。何かを面白いと感じるツボが似ているというのは、男女の相性のよさを語るうえでよく引き合いに出される。太田さんも同じだ。
「こんな恋愛をしてきたとか自分の過去を語ったりするじゃないですか。その話がいちいち面白い。興味深いというか、変わった女だなと」
 以前エッセーの中で、初恋の相手に二股かけられてひどい女性不信に陥ったという体験を書いていたが。
「その相手が特別ひどい怪物だったんだと思ってたら、そのあと知り合った女もぜんぶ怪物で(笑)。そういった意味で女は怖いというか残酷だなと。だから“癒やし系”なんていう女優さんを見てると、嘘つけよと思いますね」
 光代さんと出会い、それまでの女性観が覆されたのかというと、
「いや、そういうわけでも……。男と女の差って残酷さじゃないかと思うんですよ。女がなんでそんなに残酷になれるのかというと、後ろめたさがないからなんですね。男って何かいつも女の人に対して後ろめたさみたいなものを感じてるんだけど、女にはそれがない。うちのカミさんもオレを全否定するような残酷なことを平気で言いますからね。女って自分の愛情が世界一だと思ってるんですよ。自分の愛情に対して疑いを持ってない。自信があるからひどいこと言えるし相手を傷つけることもできる。そういう愛情と一体の残酷さには、本当にかなわない」


「女なんか」なんて
突っ張ってるうちは
マイナーなんですよね…


 芸人という立場から見て、観客としての女性はどう映るのかという質問に、太田さんは困ったような笑みを浮かべて「迷惑です」と答えた。彼一流のジョークかと思ったが半分は本気らしい。
「スポーツにせよ、娯楽にせよ、男が作り上げた世界に女のファンが入ってくると、非日常だった世界がいきなり日常の場所へ引きずり下ろされちゃうじゃないですか。たとえば、ちょっと昔の競馬場なんて汚くて、そのへんでオヤジがたむろして立ち食いソバを食ってるような世界だった。そういう殺伐とした感じがよかったんだけど、そこに女の人が来るようになったら、妙に健全になってオジサンは居場所がなくなっちゃうわけですよ。確かにテレビの視聴率なんかだと、世の中半分女なんだから、オバサンとか女子高生を狙っていけば取れる。ライブでも観客が若い女の子ばかりだと、ちょっとセリフ噛んだくらいでドカンと受けたりするんです。でも、それ、ちょっと違うだろうと。だからあえて嫌われてやれと思って『来るな。おまえらに見せるもんじゃない』って言ってたら、ほんとに来なくなっちゃって(笑)」
 そんな昔の自分について、いまは後悔しているとも言う。
「あえてメジャーを避ける、テレビを拒否するというのがかっこいいって思ってた時期があって。最初のうちはテレビじゃ見られないネタをやるっていうんでお客は来るんですけど、そのうち変なマニアの男ばっかりになるし、芸自体も放送禁止用語を並べるだけの単純な芸になっていくんですね。だから、同じことでも、過激な言葉をポンと言うんじゃなくて、語彙や表現を変える工夫をしたほうがぜったい面白くなる。『女なんか』って言ってるときより、女子高生でも笑えることを考えたほうが結果的にいいものができるってことに気づいたんですね。と、いうわけでいまは反省してます(笑)」
 映画を撮りたいと言い続けている。やはりメジャー路線で、女性が大好きな『タイタニック』的な映画なのか。
「そうなるでしょうね。自己満足とか内輪ウケというのがいちばんイヤなんです。たとえば、ウディ・アレンの映画とタイタニックを比べたら、ぜんぜんウディ・アレンのほうがいいと思うけど、威張っていいのはタイタニックなんですよ。駄作でも大ヒットしたほうがオレは勝ちだと思う。いちばんはウディ・アレンで大ヒットだけど……」
「絶対当てろ」という光代さんからの厳しい指令もあるそうだ。
「こないだ、ふと思ったんだけど、女の人って花が好きじゃないですか。女で花が嫌いという人はいない。年寄りも子供も、おそらく国も時代も関係ない。この女性と花みたいな関係って男にはないですよね。これってすごいことで、きれいなものに無条件に反応するんですね。でも、逆に言うと単純で、要は花を渡せば喜ぶんですよ、女の人って。でも、オレにはそれができない」
 自嘲をこめたような複雑な表情で、太田さんは最後にこうまとめた。
「カミさんによく『あなたにはいままで花の一本ももらったことがない』って言われるんですけどね。花束渡すってなんかね、インチキくさいというか安易な気がしてできない。自分が女にダメなところはそこなのかなと思う。男の理屈でいうと花束を渡すような男なんてキザで最悪だなって思うんですよ。『そんなもんでいいの?』って思う。花束渡すのに躊躇する男は、女性が望む男性像じゃないかもしれない。でも、オレにはできないんです。照れくさくて。そういう男はオレ以外にもいっぱいいて、そんな自分を理解してくれよって思ってるんです、きっと。そこが情けないところでもあるんだけど、そういう情けなさを含めてわかってほしいなと思うんですよ、女性には」