Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

宮崎あおい

Aoi Miyazaki 1985年、東京都生まれ。2007年は『NARA:奈良美智との旅の記録』のナレーション、日韓合作映画『初雪の恋 ヴァージン・スノー』で主演をつとめたほか、秋には『サッド ヴァケイション』が待機中。また08年放送予定のNHK大河ドラマ『篤姫』では歴代最年少の主役に抜擢されるなど、その活躍の範囲の可能性は未知数。雑誌『H』『ウフ.』でエッセー連載中。 http://www.aoimiyazaki.jp/


片岡真由美=インタビュー、文
奥村恵子=写真


宮崎あおい インタビュー
おおきな愛に包まれて

梢は愛しているわけでもなく、
相手について
すごく知っているわけでもないけれど
男たちの弱さを受け入れてしまう。
女性の強さをわかっているんですね。


少女から大人へ。
女優としての 飛躍の7年


 衣装とメークを整えた彼女が「よろしくお願いします」と言って撮影スタジオに入った瞬間、その場の空気がきらきら輝きだした。ほほ笑みながらカメラの前でポーズをとる姿を見ているだけで、その愛らしさにこちらの頬もゆるむ。宮崎あおいにはそんな天性の魅力が備わっている。
 14歳の時に出演した『EUREKA ユリイカ』(以下『ユリイカ』)で一躍脚光を浴びてから7年。最新作の『サッド ヴァケイション』は、青山真治監督が長編デビュー作『Helpless』と『ユリイカ』に続いて北九州を舞台に描く「北九州サーガ」の第3弾、宮崎あおいは7年前とおなじ役の梢を演じている。
「今回の梢には、『ユリイカ』の時には一緒にいた兄の直樹がそばにいません。でも7年たった今も、きっと2人の心は通じ合っているはずで、梢は自分が見ているものや体験していることを直樹に伝えようとしている。そう考えて、梢を演じました」
 バスジャック事件に遭遇した直樹と梢の兄妹は、以来、ひと言もしゃべらなくなり、その後すぐに母親は家を出て父親は死んでしまう。この兄妹をバスジャックされたバスの運転手だった男性が旅に連れ出す。それが『ユリイカ』のあらすじだ。7年後の梢は、消息のわからなくなった母親を今もひとり探し続け、小さな運送会社で働き始める。
「7年前は、青山監督としゃべった記憶がほとんどないんです。私が子どもだったこともあるだろうし、監督も今よりずっと壁がある感じがしました。でも最近はすごく明るくなって、青山監督の笑顔が私は大好きで、あの笑顔を見るだけですごくうれしくなります」
『サッド ヴァケイション』は、女性の強さ、優しさ、可愛さ、そして怖さが、大きな柱になっている。
「私にとって『ユリイカ』はすごく特別な作品で、あの映画に出ていなかったら、今こんなに映画にこだわっていなかった気がします。だから7年後にまた自分が梢を生きられるのは、とても幸せなことだと思いました。今回の作品には、いろいろな女性の強さが感じられますけれど、その中でも私は梢の強さがすてきだと思います。何をしゃべるわけでもないけど、ただそばにいて、その人を丸ごと受け入れる強さを梢は持っています。それは自分にとってもすごく負担になることだと思うんです。相手とおなじように自分も苦しくなったり悲しくなるわけだから。でもそれを冷静に受け入れる。そういう女性の強さは素晴らしいと思います」
 梢がある男性をひざ枕して、その頭を優しく無言でなでるシーンが強く印象に残る。『ユリイカ』を見直すと、14歳の梢もまた、役所広司が演じる元バス運転手の頭を無言でなでるシーンがあった。
「その時、どんなことを考えてお芝居をしていたかは、記憶にないです。今もそうですけど、頭で考えて演じるわけではなく、私は衣装やメークを整えて現場に入った時点で、その役をつかむ気がするんです。衣装やメークには本当に助けられます。ふだんの自分とは違う格好をすることで、違うテンションになれるんです」


演じる女性の境遇を
自分の人生の 希望にかえて


 演じることのほかに、4年ぐらい前から始めたカメラに今も夢中だ。
「雑誌の仕事で西島秀俊さんを撮影した時の緊張感はすごかったです。『もし写真が全部ボツだったら、このページはどうなっちゃうんだろう』って。冬なのに暑くなっちゃったぐらいプレッシャーを感じました。でも自分の写真が雑誌に載って“フォトグラファー=宮崎あおい”の文字を見たときの喜びは忘れられません。幸せで、そのページをずうっと眺めていました。写真を撮ることは、人とつながるきっかけになったり、世界を広げてくれる気がします」
 ほとんど常にカメラを持ち歩いているが、まだカメラは“日常”ではないという。
「お芝居は、気づいたらやっていたことなので、自分のなかでは食事することとおなじぐらい日常生活のなかにあることなんです。でもカメラは4~5年前に自分から『これをやろう』って選びとったもの。だから緊張もするけどわくわくドキドキさせてくれるものなんです」
 これまでの出演作は、家庭的に恵まれない境遇が多く、母親のいない役も目立つ。
「そうですね、なんか幸が薄い感じがするんでしょうか(笑)。でも私自身の母は、私の理想の人で、包容力があって、何があっても私を支えてくれる揺るぎない存在です。私もそういう母親になりたいし、もちろん女優としてもいい仕事をして、自分の家族のこともきちんと守れる人になりたいですね。私は自分よりも母に長生きしてほしいと思っているぐらいなんです。たとえばお芝居でウエディングドレスを着ると結婚が遅くなるみたいなジンクスがありますけど、それとおなじで、不幸な境遇の役をやることで、自分の生活には幸せが続くんだといいな、母がいつまでも元気でいてくれるといいなと思っています」
 演じる役を自分と重ねることはないと宮崎あおいは言うが、梢の強さは彼女自身に深いところでつながっている。ただし、道端にひっそり咲く野花のような梢の強さに対して、彼女自身の強さはひまわりのように明るい輝きを放ち、周囲を元気づけてくれるのだ。


※宮崎あおいさんの“崎”は大のところが立ですが、WEB上では表示できないので“崎”で代用させていただきました。